定性調査を計画するとき、調査設計や分析手法には気を配るのに、リクルーティングは後回しになりがちです。ところが調査の質を大きく左右しているのは、ここだったりします。インタビューを実施したのに対象者がターゲットとずれていた、当日のキャンセルが続いて人数が足りなかった。心当たりのある方もいるのではないでしょうか。今回は、定性調査のリクルーティングをどう考え、実務でどう動かすかをお話しします。
目次
定性調査におけるリクルーティングとは
リクルーティングとは、調査に参加してもらう対象者、いわゆるレスポンデントを募集し選定する一連のプロセスです。定量調査との違いがはっきり出るのもこの部分で、定量はサンプル数の確保が最優先になりますが、定性では誰に話を聞くかという質そのものが結果を決めます。
個別インタビューであるデプス・インタビューや、グループインタビューにあたるフォーカス・グループ・ディスカッションでは、対象者ひとりの発言が分析の核になります。だからリクルーティングが甘いと、どれほど優れたモデレーターでも、引き出せるインサイトは表面をなぞる程度で終わってしまいます。
サンプル数とリクルーティングの関係
定性調査はサンプルが少ないからリクルーティングも楽だろう、と思われることがあります。確かに人数は定量に比べてずっと少なく、デプス・インタビューなら1テーマあたり5〜15名程度、フォーカス・グループ・ディスカッションなら1グループ4〜6名を2〜4グループ実施するケースが多くあります。
ただ、人数が少ないからこそ、ひとりの選定ミスが全体に響きます。コンサルタントとしてさまざまな調査に関わってきた中でも、リクルート基準を少し緩めた途端にグループダイナミクスが回らず、ディスカッションが盛り上がらなかった、という苦い記憶があります。少人数だからこそ、設計を雑にできないのです。
- デプス・インタビューは1テーマあたり5〜15名程度
- フォーカス・グループ・ディスカッションは1グループ4〜6名を2〜4グループ程度
- エスノグラフィーは3〜8名程度。観察を伴うため厳選が必要です
リクルーティング設計の手順
リクルーティングは調査設計と並行して進めるのが理想です。調査設計が固まってから手をつけていると、実査までのスケジュールが一気に苦しくなります。次の流れで進めると、現場の混乱がだいぶ減ります。
- スクリーニング条件の設定。誰を対象にするかを具体的な条件に落とします。年齢や性別、職業といった属性だけでなく、行動履歴や価値観まで条件に組み込むと、定性調査らしい深さが出ます。
- スクリーナーの設計。リクルート会社が候補者に配るアンケート票を作ります。正解を誘導するような設問は避けてください。候補者が答えを取り繕ってしまうと、実査での発言と食い違いが生まれます。
- リクルート会社への依頼。専門のリクルート会社、あるいは兼業のリサーチ会社に依頼します。調査目的はある程度共有しつつ、候補者に伝える情報量は絞るよう調整します。
- 仮予約と本予約の管理。候補者数は実査に必要な人数より2〜3割多めに押さえておくのが鉄則です。当日キャンセルに備えて補欠、いわゆるオルタネートも手配しておくと安心です。
- 事前確認。実査の数日前に出席確認を取り、交通手段や場所、時間を改めて案内します。
いくつかのリクルート会社と仕事をしてきて思うのは、スクリーナーの質がそのままリクルート結果の質になるということです。なんとなく伝わるだろう、という曖昧な条件設定は、現場での想定外を量産します。最初に時間をかけたほうが、結局はコストもリスクも下がります。
リクルーティングで見落としがちな3つのポイント
実務でとくに気をつけたい点を整理しておきます。
- プロ回答者を除く仕組みを入れること。市場調査に頻繁に参加している人は調査慣れしていて、発言が表面的になりがちです。スクリーナーに過去数か月以内の調査参加歴を尋ねる設問を置き、除外条件を設けるのが定石です。
- グループ構成のバランス。フォーカス・グループ・ディスカッションでは、参加者同士の関係性や発言力のバランスが議論の質を左右します。同じグループに経営者と一般消費者が混ざると、発言に遠慮が出ることがあります。
- インセンティブの水準。謝礼が安すぎると辞退が増え、高すぎると謝礼目当ての参加者が混じります。テーマや所要時間、対象者層に見合った金額を設定してください。
定性調査の実査場所の選び方
リクルーティングがうまくいっても、当日の実査環境が整っていなければ、対象者の本音は引き出せません。国内外のインタビュールームを使ってきて感じるのは、その場の雰囲気が発言の質に想像以上に効いてくるということです。
古びた設備、清潔感に欠ける洗面台、狭い待機スペース。こうした小さな引っかかりが重なると、対象者は緊張をほどけないまま、当たり障りのない受け答えに終始してしまいます。Google Mapのレビューを見ても、施設の清潔さやスタッフ対応を評価軸に挙げる声が多く、それだけ実査環境が見られているということでしょう。
インタビュールーム赤坂 バイデンハウスは、こうした経験をもとに設計した施設です。こういう設備があればもっと調査がしやすいのに、という現場の声を、できる範囲で形にしました。
- 2フロア展開で、3階はカジュアルな雰囲気、4階は落ち着いたムードのある空間。調査テーマや対象者層に合わせて選べます
- マジックミラー完備。クライアントが別室からリアルタイムで観察できます
- 洗面台つきで、長時間の実査でも対象者もスタッフも快適に過ごせます
- ZOOMやストリーミング配信に対応。フォーカスビジョン(Forsta)にも対応し、遠方のクライアントもリアルタイムで視聴できます
- 英語対応スタッフが在籍。外資系クライアントや海外本社と連携する調査にも使えます
- 対象者は最大6名まで。フォーカス・グループ・ディスカッションの標準的な規模に合わせています
- 営業時間は9:30〜22:00。ターゲット層の都合に合わせた時間帯で実施できます
丁寧に選んだ対象者の声を、最大限引き出せる環境を整える。これが定性調査の質を仕上げる最後のピースだと考えています。調査設計からリクルーティング、実査当日までを同じ品質で通したい方は、一度のぞいてみてください。
お電話でのお問い合わせ:03-6441-0989(11:00〜18:00、土日祝除く)
著者プロフィール
石崎 健人
インタビュールーム株式会社(リサート)取締役
株式会社バイデンハウス 代表取締役
外資系コンサルティング・ファームを経て現職。マーケティングリサーチャーであり定性調査のモデレーター。アドタイにて「Z世代の誤解とリアル。ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。
