グループインタビューの司会を任されたとき、議論が深まらない、特定の参加者が話しすぎてしまう、といった悩みを抱える方は少なくありません。モデレーターの動き方は調査の成否を大きく左右します。これまで数多くの定性調査に関わってきた経験をもとに、グループインタビューの司会に必要なスキルと心構えを実践的にお伝えします。
目次
① フォーカスグループで司会が果たす役割
フォーカスグループ・ディスカッション、いわゆるFGDは、複数の参加者が集まって特定のテーマについて意見を交わす定性調査の手法です。1対1で深く聞くデプス・インタビューと違い、参加者同士のやり取りから個別では出てきにくい気づきが浮かび上がってくるのが最大の特徴です。この場をコントロールするのがモデレーターの仕事で、議論の方向をガイドし、全員の声を拾い、表面的な意見の奥にある本音を引き出します。外資系コンサルティング・ファームに在籍していた頃、優秀なモデレーターのセッションを何度もオブザーブしてきましたが、うまい司会ほど存在感を消しながら場を動かしているという印象が強く残っています。
② 司会が押さえる4つのフェーズ
進行は大きく4つのフェーズに分かれます。はじめのオープニングでは、自己紹介や軽いウォームアップから入り、正解も不正解もないので率直に話してほしいと最初に伝えて緊張をほぐします。続く導入質問では、テーマに関連した経験や日常を語ってもらう質問を投げかけ、いきなり核心に踏み込まないのがポイントです。コア質問のフェーズでは、なぜそう感じたのか、具体的にはどんな場面だったのかとプローブと呼ばれる深掘りの問いかけを重ね、表層の回答で終わらせないようにします。最後のクロージングでは議論を振り返り、今日の話の中で一番大事だと思ったことは何ですかと問いかけて締めくくる方法が有効です。
③ 人数と発言バランスの管理
人数は4〜6名程度が扱いやすい規模です。少なすぎると議論が広がらず、多すぎると一人ひとりの発言機会が減って意見交換が表面的になりがちです。司会にとって最大の課題のひとつが、この発言バランスの管理になります。特定の参加者が話しすぎるときは、ありがとうございます、では◯◯さんはいかがですかと自然に振り直します。発言を否定せず、流れだけを変えるのがコツです。沈黙が続いても、まずは怖がらずに少し待ちます。それでも進まないときは、たとえばこういう経験はありますかと具体例を示して促します。沈黙は場の失敗ではなく、参加者が考えているサインだととらえると、司会としての落ち着きが変わってきます。
④ よくある失敗への対処法
議論が脱線したら、興味深い視点ですね、少し戻って◯◯についても聞かせてくださいと柔らかくリダイレクトします。意見が対立した場面では、どちらにも肩入れせず、いろんな見方がありますね、他の方はどうですかと広げます。沈黙への対応や発言の偏りといった課題は、どの司会者も経験するものです。これらは場の失敗ではなく、参加者が考えを整理している時間だととらえることで、モデレーターとしての余裕が生まれます。
⑤ 司会がやりやすい会場選び
会場の選び方は、司会のパフォーマンスに直結します。さまざまなインタビュールームを使ってきて感じるのは、設備が整っていればモデレーターは場のコントロールに集中できる、ということです。録音機器の不具合や、クライアントが落ち着いて観察できない環境では、司会者にも余計なプレッシャーがかかります。会場選びで確認したいポイントは、マジックミラーが設置されクライアントが別室でオブザーブできるか、対象者人数最大6名程度に対応したルームサイズか、ZOOM配信やストリーミング配信に対応しているか、洗面台など参加者が快適に過ごせる設備があるか、グローバル調査に向けて英語対応スタッフがいるかです。私が設計・運営しているインタビュールーム赤坂 バイデンハウス(東京都港区赤坂2-14-8 山口建設ビル3階・4階)は、こうした現場の声をもとに作り上げた施設です。3階はカジュアルで参加者がリラックスしやすい雰囲気、4階はシックで落ち着いた空間と、目的やターゲット層に合わせてフロアを使い分けられる設計にしました。グループインタビューの司会は、準備とスキル、そして場の環境がそろってはじめて機能します。
